転職に欠かせない、職務経歴書。どんなふうに書けば自分を最大限アピールできるのか?と悩む方も多いのではないでしょうか。
そんな方のために、営業の職務経歴書の書き方とポイントを、採用からマネジメントまでしている営業所長が伝授します。人事担当者に「売上に貢献できる人材」と判断してもらうには、どのような職務経歴書がよいのか?自己のアピールポイントや実績のまとめ方など、作成ポイントを徹底解説です。
お話をうかがった方:佐藤 智洋(さとう ともひろ)さん 現在、ジブラルタ生命保険株式会社の営業所長として17名のメンバーをまとめています。前職は紳士服販売のAOKIホールディングスで、11年間勤務しました。傘下のORIHICA(オリヒカ)という業態にて30代前半で営業部長となり、在籍中に全国100店舗規模まで拡大しました。35歳の時に現職に転じました。営業部門の責任者として会社の業績向上に貢献してきたことはもちろん、採用や人材マネジメントにも精通しています。
Q. いわゆる「よくない職務経歴書」を教えてください
佐藤:曖昧な表現が多いものは刺さらないことが多いです。規模や具体的な成果も曖昧になってしまうためです。その結果、人事担当としては「で、結局この人はウチで何ができるんだろう???」とセールスポイントが見えなくなります。職務経歴書を見る側は、業界や業種が違う場合もあるので、できるだけ具体的に数値化すると良いです。「通期売上いくら」といった数値はもちろん、「何人中の何番」「前年比何割増加」など比較のできる数値を示すことも効果的です。
ほかにもいくつか具体的に例を挙げてみます。
◆枚数が多い
枚数が多い人は余計なことまで記載している人がほとんどです。薄い内容まで膨らませて書いているので、面接前にハードルが上がってしまい、実際に話すと内容が物足りないケースが非常に多いです。会社側が求めているのはどんな人か、業界や業種によって求められるものは何かを自分なりに絞り込み、アピールポイントに盛り込めたら良いです。
◆文字が小さく、文字数が多い
実際にはそこまで細かく読み込むことをしないと思います。見た目から読むことにパワーを使いそうなので、マイナススタートになります。結論を明確に記載することが、この人は論理的に物事を考えることができる人なんだと感じることができます。
◆経歴ごとのムラ
2社以上ある方で、直近の会社に関しては詳しく記載があったとして、その前の内容が少ない場合があります。転職を重ねている方は、転職をする度にスキルを伸ばしていっているということが分かると計画性のある人と捉えますが、全く違う分野で転職を重ねている人は、転職理由等に疑いを感じてしまいます。
Q. これまでにあったビックリ職務経歴書はどんなものですか?
佐藤:良い例と、悪い例の両方をお伝えしますね。
◆良いビックリの例
実績が具体的に数値化されていて、その成果の大きさにビックリしたことはあります。数字で実績が書かれていると断然分かりやすくなりますし、質問をして掘り下げていくにしても、面接官としては良い部分を引き出しやすくなります。どの数字を拾うかは問題ではなく、自分がアピールできる、成果として感じられることを記載することで、たとえ自分がすべてを実行したことではなくとも、良い印象につながります。
◆悪いビックリの例
履歴書のような配属部署だけの記載の人はどうしようもないと思いました。質問するのも面倒になるので、面接自体が消化試合のようになってしまいます。経歴に誇れる部分がないと感じているからきちんと主張できないのかもしれませんが、そういう方は自己肯定感が低く、物事をネガティブに捉えやすいのではないかと思います。自分をアピールしないことが謙虚に映ることはまずあり得ないのです。
書き方のポイント1:職務内容は分かりやすさが一番
どんなことをやっているのかを端的に表現してもらえると助かります。逆に部署の名前と同じような内容を記載されると分かりにくくなります。
例えば「どういった顧客に」「どういったモノを」「どのように」提供しているのかなど、5W1Hのような項目立てを意識して内容をまとめて示すと分かりやすいです。
【記入例】
主に中小企業を対象にOA機器の新規開拓を行う
取扱商品:商品A(約50%)、商品B(約35%)、商品C(約15%)
営業スタイル:新規開拓80%、既存顧客フォロー20%
担当地域:関東全域
担当顧客:担当社数常時約20社
(商談相手は経営者もしくは管理部長、総務部長)
書き方のポイント2:実績は規模と順位を数値化して表現
「1位になりました」といっても、どのくらいの規模の組織の中での1位なのかを質問してしまいます。その結果、小規模の中での高順位と言われると、逆効果でマイナスになってしまいます。最初から具体的にどのくらいの規模で、対象人数がどのくらいの中で、立ち位置はどのくらいなのかを明記してもらった方が印象は良いです。
【記入例】
営業実績
・20××年度:契約件数250件、契約金額9,000万円
(支店内順位15人中2位/目標達成率110%)
・20××年度:契約件数300件、契約金額12,000万円
(支店内順位30人中1位/目標達成率120%)
書き方のポイント3:自己PRはポイントとなる項目を具体的に示す
自己PRは、先述の内容と重なりますが、「状況」「その時の仕事」「自発的なアクション」「結果」を具体的に表現することです。さらにプラスするとすれば、いま面接を受けている組織(転職希望先)への適応性が分かるといいです。例えば、自由な裁量のある仕事なのに指示されて動くタイプの人は選考の際に不利になります。転職した後にその組織に適応できるかということも観られているのです。
【記入例】
主に新規顧客を対象とした営業職に従事しました。
私自身は同僚メンバーと比較して、特に抜きん出たスキルはありませんでしたが、それを補うために「誰よりもテレアポと訪問数を増やす事」を目標に置き、走り続けてきました。提案手法の改善を繰り返しながら、全てのプロセスをエクセルデータでも管理し、次回の改善につなげました。
また、積極的に顧客とコミュニケーションを取り、顧客が困った時にいつでもお役に立てるような関係性作りに努めました。
その結果、営業部内トップの成績を上げる事ができました。
Q. 営業職に求められる能力と、そのPR方法を教えてください
佐藤:営業職として求められる能力は多岐にわたります。しかしながら、転職活動の際に人事担当者が見ているのは、能力というより成功体験を持っているかどうかということです。人は過去に起こした行動を繰り返すと言われており、過去に成功した経験がある人は成功する可能性が高いからです。これまでの営業職としての職務経歴の中で成功した経験を示すことが意外と重要なポイントになると思います。
その成功体験をPRする方法としては、「状況」「その時の仕事」「自発的なアクション」「結果」が具体的に分かると、自分に何ができるのか面接官に伝わりやすくなります。具体的であることと、客観的な事実をきちんと整理して述べることがとりわけ大事なポイントになります。
Q. 職務経歴書を書く上でよくある疑問に、アドバイスをお願いします
職務経歴書は何枚くらいがいいですか?
何枚に正解というのはなく、自分というものをどのように伝えたいのかということなので、1枚なら1枚でも私は良いと思います。ただし捉え方として、4枚とか5枚の職務経歴書を全部読もうとはしないという気持ちの問題です。
職務経歴書の構成要素としては、職務要約・経歴・職務内容や実績・スキルや資格・自己PR・志望動機。これさえおさえて自分をアピールできていれば良いと思います。
転職歴が多い場合はどのように書いたらいいですか?
転職歴が多いということは、分かりにくくなる確率が高いので、簡潔に記載する必要があると思います。転職の間が抜けてしまっているところは特に見るかもしれません。何か別の理由があるのではないか、計画性の無い人なのでは、などマイナスイメージにつながりやすいので、具体的に記載しておくと良いでしょう。
職務経歴書で合否って決まりますか?
職務経歴書によって、合否が決められてしまうことも書類選考がある会社によってはあるのかもしれませんが、私の場合は職務経歴書によって、その人の良さを引き出すことができる面接になるかどうかだと思っています。つまり面接官としては、質問もしやすくなるため、受ける側としても答えやすい質問が増えて、面接がいい展開になることが多いです。
最後にアドバイスをお願いします!
佐藤:採用時の書類作成に限らずどこでも言われることですが、結論を明確にすることと、数値化することがポイントです。この2点を意識してまとめていくことで分かりやすくなります。
困ったら「結論を最初に述べて、なぜそう言えるのかの理由を3つ程度に絞って、数値を用いて説明する」ことを意識してみてください。伝わりやすくなります。
kokoroe編集部より
これまで数々の職務経歴書を見てきた、採用のプロからのアドバイス、ぜひ参考にしてみてください。「実績はわかりやすく数値で」を意識して、ご自身の魅力を最大限にアピールしましょう!
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