独立してフリーランスになると、引き合いが途切れなくなる人と苦戦する人に分かれます。能力も勤勉さも同様なのにこうした差が出るのは、「お客様がこちらをどう認識しているか」の差かもしれません。引き合いが途切れなくなるためにどうすればいいかを専門家に聞いてみました。
監修+話題提供:倉増 京平(くらまし きょうへい)さん 広告会社勤務のビジネスプロデューサー。SNS全盛時代におけるブランディングの方法論を日々研究中です。これまで広告の仕事で培ってきたスキルを活かしながら、ライフワークとして起業家支援や新規事業開発など、新しい領域のクリエイティブを行なっています。社会課題が山積するこの時代において、『世の中に良いこと』をしながら『ちゃんと儲ける』仕組みを創るのが人生の目標。また、ダイバーシティの観点から積極的に様々な団体との関わりを持っています。
起業すると分かれ道が来る
独立してフリーランスになることは、新しい事業者として実績ゼロからスタートするということです。
独立して同じように実績ゼロから始めても、しばらくするとうまく伸びていく人と苦戦する人の分かれ道ができてくるように感じられます。伸びていく人はどういうわけか次々と引き合いが来るようになり仕事が回り始めます。苦戦する人はなかなかそうなりません。
よくビジネスのセオリーでは、
1. 自分がどこの誰に何を提供するのかを定める(市場と提供価値を定める)=マーケティング
2. その市場と顧客に対して自分をアピールしていく=ブランディング
という段階を踏んでいくといい、と言われます。
今日は独立して働くフリーランス営業職の「ブランディング」について専門家に教えてもらいました。
何によって覚えてもらいたいか
アサヒ、キリン、サッポロ。
これらの単語を聞いたら「ビール」を連想する方が多いと思います。
これがブランディングの成果です。
こうしたブランディングのことを「何によって覚えてもらいたいか」と言い換えてくれたのが今回お話を伺った倉増京平さんです。
倉増さんによると、「何によって覚えてもらいたいか」という表現は、経営学者のピーター・ドラッカーが著書の中で使った言葉だそうです。
成果をあげるための第一歩は、行うべきことを決めることである。いかに効率があがろうとも、行うべきことを行っているのでなければ意味はない。しかる後に、優先すべきこと集中すべきことを決めることである。そして自らの強みを活かすことである。
(中略)
私が一三歳のとき、宗教の先生が「何によって憶えられたいかね」と聞いた。誰も答えられなかった。すると、「答えられると思って聞いたわけではない。でも五〇になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよ」といった。
(出典:P.F.ドラッカー著『非営利組織の経営』)
「そんなこと言っても、アサヒもキリンもサッポロも大きな会社だし、お金があったからできたんでしょ?」と思う方もいるかもしれません。
そんなことはありません。
例えば今住んでいる町で、外で食事をしようと思った時に、「中華ならここ」「イタリアンならここ」という具合に思い出すお店があると思います。それがたとえ大規模資本とは無縁の個人経営のお店だったとしても。
ブランディングの成果はいくらお金をかけたか、とは必ずしも関係ありません。
キーワードから連想して思い出してもらえることが大事
「何によって覚えてもらいたいか」というのは、顧客側から見ると「何から連想して思い出すか」です。
では、連想して思い出してもらうためにどんな情報が必要なのでしょうか?
倉増さんは「何のことで1番なのか」だと言います。
先ほどの外食の例で言えば、「あのお店のエビチリはどこにも負けない」「あのお店のナポリタンは日本一だ」こんなふうに思ってもらえる【看板メニュー】があれば強いです。
これを個人事業者に置き換えた場合、【何の第一人者なのか】になります。
「”このテーマの第一人者”として思い出してもらえるのがいいです」と倉増さんが教えてくれました。
「営業」の中でも「○○の営業では誰にも負けない」などといった、代名詞となる何かがあるといいということだと理解しました。どの分野やテーマ、在り方で覚えてもらいたいかを整理してそこに注力していくのです。
倉増さんが具体的に例を挙げてくれました。
あの人は仕事がとにかく速い(質については色々意見もあるが)
⇒何よりもスピード重視の時はあの人に頼もう
あの人は時間はかかるけれど100%以上のものを必ず出してくれる
⇒時間やお金がかかってもいいから質の高い成果が欲しい時はあの人だ
納品の質と速さという軸だと上記のような例が成り立ちます。
ほかにも、得意な営業先や扱う商品などの軸で考えて、
大企業向けのITソリューションの営業はあの人に頼もう
飲食店向けの足で稼ぐ営業だからあの人にお願いしよう
といった例もあるかと思います。
こうした「自分は何ができるのか・何の専門家なのか」という旗を揚げておくと、顧客が自分を選んでくれるようになります。
事前期待をコントロールできればリピートが起こる
「とにかく速く仕上げてくれる人」「時間はかかっても質の高い仕事をしてくれる人」「○○の分野の営業ではナンバーワンの人」など、代名詞となるものができたら、次はユーザーの事前期待を意識したいところです。
「事前期待」という言葉も倉増さんが教えてくれました。
オムロンフィールドエンジニアリング社の常務取締役として企業改革を実践した、諏訪良武氏が著書の中で使っている言葉だということです。
お客様には、事前に期待されている何らかの期待値があって、それに対して実績評価が大きいとお客様は大満足し、「リピート客化」していく。反対に、事前期待値が大きくて実績評価が低いとがっかりして、「顧客を失う」ということになる。そして、事前期待と実績評価がほぼイコールの場合は、「印象が薄い」結果になってしまう。
(出典:諏訪良武著・北城恪太郎監修『顧客はサービスを買っているー顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント』)
「売上金額さえ達成できれば顧客属性は問わない」
「顧客は上場企業のみに絞って営業してほしい」
同じ金額の売上を立てるとしても、こういった認識が自分と顧客で一致していないと、相手をがっかりさせることになりかねません。逆に、期待を超える成果を残すことができれば喜ばせることができ、リピートしてもらうことにつながります。
期末の駆け込みの時には通常よりも短時間での成果を求められることがあるように、事前期待は時に応じて変わります。相手の期待の在り方を常に知ることが重要です。
「その事前期待を知り、上回る成果を提供できると思えば引き受ければいい。ではもし期待を上回るのが無理そうならば?」倉増さんはそんな問いを立てて、解も教えてくれました。
・断る
・できる人に振る
・相手の期待値を下げる(事前期待をマネジメントする)
とりわけ強調されたのは3つ目でした。
「相手の期待を知って、その期待値をコントロールする。満足してくれればリピートは起こります」
お客様の事前期待は時間とともに自然と膨らんでいくので、本音のコミュニケーションや契約内容の確認、要求仕様の確認などで、事前期待を本来の水準にマネジメントしなければならない。お客様に満足してもらうためには、膨れ上がった事前期待を妥当な水準に戻すことが肝要である。意味なくお客様の事前期待が膨らんでしまうと、サービススタッフがどんなに努力してもあまり喜んでもらえないという、やりがいのない環境を作ってしまう。
(中略)
「営業が風呂敷をたたむ」というのは、典型的な事前期待のマネジメントの例だと思う。営業は受注前にはお客様の期待を膨らませてしまうのが普通である。最初からあまり謙虚に対応していたのでは、提案のチャンスもいただけない。そこで、受注の見通しが立ってきたら、「広げすぎた風呂敷をたたむ」対応が必要である。ベテラン営業は上手に風呂敷をたたんで、お客様の事前期待のマネジメントをし、ウィン-ウィンになる妥当な条件で商談をまとめ上げる。
(出典:諏訪良武著・北城恪太郎監修『顧客はサービスを買っているー顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント』)
その時に抱えている仕事の量や時期的な都合など様々な要因で顧客の期待値と自身の提供できるものがマッチしないことは往々にしてあります。恥ずかしいことではありません。無理して引き受けて結局できないよりも、引き受ける前に適切な判断と対応ができることが重要です。
番外編 やりたいことの見つけ方
自分はどう見られたいのか、自分をどう見せたいのかを考える時に役立つのがブランディングの考え方です。
ブランディングは「何によって覚えてもらいたいか」にしか答えてくれません。
もうお気づきだと思いますが、その前提には、「そもそも自分は何をしたいのか」「どこの誰に何を提供したいのか」が欠かせません。これがはっきりしている人はブランディングの効果も出やすいです。
しかしながら、「自分は結局何をしたいんだっけ?」という問いになかなか「これだ!」という明確な答えを出せない人もいると思います。そんなときはどうすればいいでしょうか。
これまでにやってきたことを思い起こしてみてください。そのなかで気持ちが高まったり楽しいと感じたりしたことはなんでしょうか?それがやりたいことだったり相性のいいことだったりする場合が多いようです。
自分のこれまでを振り返って自分への理解を深めることも独立して働くうえでは重要なことの1つです。
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そうはいっても、「気持ちが高まるようなことが何だったか思い出せない」という方もいらっしゃるかもしれません。
また逆に「やりたいことは万全に分かっているから、早く営業職として活躍したい。案件が欲しい」という方もいらっしゃると思います。
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