保険代理店のA&A Consulting 株式会社・代表取締役の桂雄人アランさんにお話を伺いました。後編の今回は、取材の随所で登場した、アランさんのさりげない名言をまとめてご紹介します。
桂雄人アランさん
1991年フランス=パリ生まれ。日仏のハーフ。高校で来日し、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。新卒で株式会社電通に勤務し金融クライアントを担当後、市場と顧客のギャップに興味を持ち業界研究を続けました。2016年の夏に営業職として保険代理店に転職後、A&A Consulting 株式会社を創業。志高い一流の営業マンの育成に心血を注ぎつつ、全国の顧客の金融相談を受けています。MDRT成績資格会員/Court of the Table(2019/2020年度)
営業はどこまでいったら相手が拒絶するかを探る行為
トークスキルに注目する営業は多いですが、実はトークスキルより大事なものがあると思っています。お客様とのやり取りの中で「ここまでやりましょうか?ここからはNGですね?ではどこまでやりましょう?」というような、相手の感情に寄り添った提案がうまくできることがうまい営業だと思います。
なお、営業職は拒絶されることも多いですから、心が強くないとやっていけません。だから、スキルやテクニックを磨くこと以上に、モチベーションを高めて、心の持ちようをケアすることが大事になります。
日々1つ1つ理由付けしながら生きたほうがいい
保険をいいものとしてお勧めするために、その他の金融商品もたくさん見てきました。他を知らずにそれだけをいいと思い込んでいると、それがいいと思えなくなった時に理由付けができなくなります。
他の商品もきちんと見たうえでやっぱりこれが一番いいと勧められることは強いです。同様に日常生活においてもただ漫然と過ごすのではなく、服のチョイスから歩くルート、隙間時間の活用方法に至るまで1つ1つに理由付けしながら生活すると判断力があがり自然と納得感をもたせられるようなります。
未経験からトップになりたければ、とめどないgiveを大事にすること
業界未経験の人がトップを取ろうと思ったら、まずは顧客に尽くしきることから始めるのがいいと思います。相手に提供できるものとして、”お金” ”人脈” ”時間”が考えられます。お金は有限ですが、人脈と時間はなくなるものではないと思っています。
なにをするにも先にお金を考えてしまうと、その相手との関係が短期的なものになってしまいます。一方で、自分の時間は相手に使い、それが新たな人脈やお金に結びついた経験というのは私はたくさんしています。
なんでもハイを言い続けることによって、give, give, giveを続けます。
相手に献身的に接することによって喜んでくれ、それが巡り巡って自分に返ってくるようになるのです。
それでも、短期的に成果を求めてしまい、giveが返ってきた経験がなく躊躇してしまう方もいると思います。その場合は無理のない範囲の小さなことから意識するといいです。ちょっとしたリターンを感じられるようになると、人への感謝も自然とできるようになります。
人を紹介してもらえないと嘆く前に、紹介を出す価値がない人間と思われてないかを考える必要があると思います
案件に恵まれない、運が悪い、ということは現実にあるのかもしれませんが、自分がどう考えるかのほうが重要だと思います。
環境のせいや人のせいにせずに、自分が納得しながら行動して、失敗したらその場で修正するようにするといいです。どこまでいっても自己責任を追及できるようにしておかないと、いつまでたっても他責にしてしまうのが人間です。
伸び悩んでいるなら、どこかで地獄のような量をやらないとダメなんだと思います
量をこなしていても振り返りをしないと質は高まりません。また振り返りを常にやっていても量をこなさないと、質が正しいのかの判断がつきません。やり方は合っているのに量が足りていないからできなかったパターンや、頑張っているのに振り返りをしないから何度も同じことを繰り返してしまうパターンをよく見ます。失敗をたくさんして、それをどこまで経験値にできるかが成長のうえでは欠かせないですよね。
できる営業職は誰よりも失敗していますし、誰よりも断られる経験をしています。失敗を学びに変えられる人は強くなって上にのぼっていけると思います。その点で言えば、私は多くのチャレンジをしてたくさんの経験をしました。失敗の数は多かったですがその都度振り返って克服しています。量をこなしたうえで深く考えるから質も上がり、成長に繋がっていると思います。
商材を売るのは営業ではありません
商材が決まっていてそれを顕在化している相手に売るのは販売です。保険業における営業とは、相手が認識していないリスクや課題感をトークを通じて引き出すことです。お客様の要望通りのことだけをしてしまっていてはいけません。
ニーズを顕在化させ、プロとして営業する自分が良いと信じるほうにお客様の価値観を変えて頂けるよう努めるのです。販売は、この態度変容が起こって、購入を決めてからやればいいのです。
私は営業としてそういうスキルを身に着けています。決められたモノを売るスキルを身に着けているわけではありません。だからこそ、このスキルがあれば営業以外の仕事もできると思っています。
kokoroe編集部から
取材のなかで飛び出した数々の言葉が、伸び悩む若手営業職のみなさんに勇気を与え、プロ営業のみなさまが駆け出し時代を懐かしむきっかけになればと思い、まとめてみました。どれも、当たり前ですが、改めて言われるとハッとする言葉のように思います。「どこかで地獄のような量をやらないとダメ」という言葉は営業以外にも万事に通じる言葉で、ビジネスパーソンとしてのスキルアップの際には忘れずにおきたいものです。
アランさんの前編記事はこちら
AI時代に生き残る営業力とは?人間力で差が出る保険営業の魅力