姫野 有美(ひめの あみ)さん 1982年生まれ。結婚式場所属のウェディングプランナーをはじめ、これまでにいくつかのお仕事に就業されています。2013年10月にフリーランスとして独立し、nanairo-weddingを立ち上げました。フリーランスのプランナーだからこそできる自由な発想とスタイルを強みに結婚式を提案しています。また、toi styleの商号で営業職のコーチとしてもご活躍されています。
姫野さんには理想とするビジネススタイルがある。
その理想を言葉にしてもらった。
単なる商取引を越えた深い話だった。
最先端を行くビジネスより長く続く商売がいい
「近江商人の発想は凄いですよね」
世の中には、自分のためにはなるけど、お客さんや会社のためにはなっていない、ということもざらにある。
そこを三方良しというバランス感覚で進めるのが近江商人だ。
「資本主義のスタイルより日本の営業スタイルが好きで、今そこを学んでいる最中です」
“ビジネス”ではなく”商売”という感覚ということだろうか。
“無理に売るな、客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ”
“良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり”
長く続けるためには相手が喜ぶことをした方がいい。
自分はお客様へ何ができるだろうと考えられる人が世の中にいっぱいいたらいい。
「でもそれを営業法として表現したりするのは難しいですよね」
姫野さんが思う日本の商売
ビジネスではなく商売という感覚。
なんとなく分かる気もする。
姫野さんにとって、日本の商売ってどんなものなのだろう。
「なんだろう。そもそもの商売の根底が、利益主義ではなく、人と関わって喜ばれることと、それがめぐって循環することだと思うんですよ。お金も口コミも人とのつながりも」
関わる。喜んでもらう。戻ってくる。
「だから今が良ければいいわけではなくて、遠い未来を考えた時にどう在りたいか、今何ができるか、自分が死ぬ前にどんな気持ちでいたいか、ということを含んでるんじゃないかなと思います」
結局、商売も生き様だ。
「やったことが自分に返ってくるのだとしたら、よく思われたいから行動するのではなく、この人が幸せになることで、その周りにはもっと幸せが増えると思えたら、より豊かさが広がっていくという気がしますね」
接客は営業職のための時間ではない
姫野さんは営業職の勉強会もやっている。
どんな営業職の人が来るのだろうか。
「がつがつ営業している人は少なくて、控えめだけどお客様のためになりたい、芯のある方が多い印象です」
来る人に共通する特徴はあるのだろうか。
「できない営業マンは、接客は自分のための時間だと勘違いしている!」
即答食い気味に返ってきた。
「売り込んで買ってもらおうとするほど、お客様は時間もチャンスもお金も奪われる気持ちになって逃げてしまいます。それに情報はすでに持っている場合もあるので、安易に提案するのは危険です」
今はネット、口コミ、周りから欲しいものの情報を仕入れることができる。
「情報だけはあっても、何が自分に合うのかわからないからこそ、困ってわざわざ足を運んでくれていることを認識しておかないといけません。困っているのに、聞いてくれない。理解してくれない。そういう対応をされたら、期待はずれに思われる可能性は高くなるのです」
姫野さんは、どんなに時間の無い商談でも、9割は相手の話を聴いている。
「お客様が自分の悩みや欲しいモノに気づかないと、結局、”なんとなく聞けたから、理解したつもりにはなった”で終わる。それでは買うまでの想いには至らないんです」
顧客が抱える言葉にできない理想を明確にする。
そのプロセスがあって初めて本当に必要なものを手に入れることができる。
「だからこそ、理想の先にある本当の想いを引き出すことはお客様のための時間とも言えます」
物ではなく相手が実現したい未来を売る
姫野さんが、もし今と別な商材を扱うなら、何を選ぶだろうか。
「営業ならなんでもやってみたい!」
すごいバイタリティだ。
その理由はなんだろうか。
「目の前の人を喜ばせたいから」
Aという商品を扱えばそれに合わせた喜ばせ方ができるし、Bという商品を扱えばそれに合わせて喜ばせられる。
そう考えている。
「相手の想いを引き出せれば解決方法が分かる。これが叶えばいいんだという目的が分かる。私が叶えられないものもたくさんあると思うので、その時には、叶えられる人を探してくればいい、というスタンスです。だから営業だったら何でもやってみたい!」
喜ばせたい気持ちの強さが伝わってくる。
「人を喜ばせることが好きな営業職は何でも売れると思います。商品を売るスタンスの営業職はそれしか売れないけど、相手に未来形を想像させてあげられる営業職は何でも売れると思う。売っているモノは物ではなくて相手が作りたい未来ですよね」